WTF: What's The Future and Why It's Up To Us
WTF: What's The Future and Why It's Up To Us
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全文、Web に上がってるぽい
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ある意味で、本書はテクノ楽観主義の書だ。グーグルやフェイスブックなど(通称GAFA)が巨大プラットフォームとして台頭してきたことを、類書の多くは警戒する。そうした私企業が、社会全体を左右するような大きな力を持ち、民主主義的なチェックなしで何でもできる点を危惧することが多い。本書はそのような見方はせず、こうした技術プラットフォーム系企業の成功と台頭を、自分の見てきた技術発展の自然な流れと捉え、生じている各種問題もアルゴリズムによる技術的な問題だとする。これ自体には異論のある人もいるだろうが、一方で著者ならではの技術的視点として刺激的なものだ。
そして、その視点から出てくるウーバーに触発された新しい社会へのビジョンも、ティム・オライリーならではの説得力を持つ。オンデマンドで労働者が自発的に働く、通称「ギグエコノミー」については、批判的な見方もあるし、また限られたものだからあまり過大な期待をすべきではないという声も強い。でも、パソコンもインターネットも、オープンソース・ソフトウェアも、キワモノ扱いされているうちに、いつのまにか天下を取った。そうした動きを先取りした著者の指摘は、一概に無視できるものではない。
(追記:蛇足ながら、著者の経済についての話は多少誤解がある。13章では、グーグル社の経済影響報告に出た広告主等の収益増加の数字がそのままGDPへの貢献だと述べている。でもその分、他の会社の仕事が減っていればGDPには影響しない。経済全体への価値創造を見るには別の考え方が必要となる。また16章に出てくる気候変動についての対応は、どこまで本当だろうか? 著者はそれを「パスカルの賭け」と対比させている。が、パスカルの賭けは通常、論理学ではまちがった考え方の一種とされることを忘れてはいけない。)